話が分かりやすい人っている。頭脳明晰で、なんでも分かりやすく噛み砕いて話すことができる人。そういう人の話は、違和感なくすーっと頭に入ってくる。面白いくらい理解できるから、どんどん聞きたくなる。話が分かりやすいというのは魅力的な能力だ。
僕は話が分かりやすい人っていうのは、脳内の整理整頓が得意なんだと思う。頭のなかに、部屋があるとしよう。そこにはいろんなモノが転がっている。それは知識とか、情報だ。その部屋には小さな自分がいて、部屋の片づけをする。
話が分かりやすいっていうのは、モノゴトの整理とか分類の仕方がうまいっていうことなんだと思う。普通に部屋を片付けるときって、無意識に物を分類している。本は作者名順に本棚へ、とか。服は夏物と冬物を分けて、クローゼットへ、とか。自分なりのルールに則ってモノを分けていく。それが得意な人は片づけがうまい。
脳内の整理整頓もそれと同じで、頭のなかの情報を自分ルールに則って、整理していく作業っていうのがあると思う。「これはこういうこと」「これはあいつと同じだな」とか、すでに持っている知識と結び付けたり、新しい引き出しを作ったり。この作業が得意な人は、いつも頭のなかがすっきり整理されている状態になっている。
で、そういう人の話っていうのは、すごく分かりやすい。すごくよく整理されているからだ。どこの引き出しから出してきたのか、そしてそれはいったい何なのか、なにと似ているものなのか、これと違うものは何なのか。それらが明確になっているから、聞く人は理解しやすい。
整理された話は、聞く人の頭に整理されたまま入ってくる。もう整理された状態で、自分の頭のなかに入ってくる。あとで自分で整理する必要がない。だから、そういう話を聞くのは、とても気持ちが良く感じるし、とても納得しやすい。頭が整理される、というのは人間に快感をもたらす。
頭のなかの整理整頓が苦手な人や、めんどくさがってなかなかやらない人ほど、話が分かりやすい人の話に魅力を感じる。自分の代わりに頭のなかの整理をしてくれるからだ。いままで自分の頭のなかにあった知識や情報をうまく分類して、きれいに片付けてくれるのはとても気分がいい。
「今でしょ」の林先生とか、池上彰さんなんかが人気があるのは、あの人たちは知識の整理が上手で、よく整理された状態で話をしてくれるからだ。自分の代わりに難しいことをよく整理してくれるから、みんなどんどん耳を傾けたくなる。
逆にいえば、よく整理された話っているのは、一見完璧なものに感じられるから、疑わずに聞いてしまう。もしそれが間違った話だった場合、間違った情報を信じてしまうことになる。それが信者とか、盲信とか、詐欺とか、っていう話につながってくる。
片づけをめんどくさがってしまう人ほど、よく整理された話をそのまま信じてしまいやすい。それを防ぐには、やっぱり自分の頭でよく考え、頭のなかの整理を癖づけるしかない。